肥料の性能を高める技術
化学肥料の新しい技術として、「肥効調節型肥料」があります。化学肥料の溶解性や形態変化を抑制する仕組みにより肥効を放出するタイミングを制御できる機能を持つ肥料で、「緩効性窒素肥料」、「被復肥料」、「硝化抑制剤入り窒素肥料」などが開発されています。特に、樹脂系被覆肥料は1970年代後半より開発が進みましたが、肥料成分の溶出制御の精度が高く、施肥技術に革新を起こしました。
インターファームの工場は有機肥料の粒状化で養った技術で、この被覆肥料の開発で大きく貢献して参りました。
正球体で被覆膜の厚さを均一に加工できる技術や、溶出のコントロールにより肥効が計算できる技術など、結果的に肥料の流亡が抑えられます。
例えば、水稲では従来、田植前に基肥が施した後に1~3回の追肥が行われますが、基肥の中に肥料成分の放出タイミングが異なる被覆肥料を複数配合することにより追肥作業の手間を省略することが可能になります。
また、栽培期間が長期に及ぶ作物(ネギやタマネギなど)や、傾斜地に栽培されていて施肥作業が大変な柑橘園などにも肥効調節型肥料については一定のニーズがあります。これからますます大規模化や省力化が求められる生産現場においてはさらに潜在需要があるものと思われます。
また、近年では、農業用ドローンで効率よく散布可能な肥料に関する要望が増えてきていますが、インターファームは多種多様な被覆肥料原料を揃えており、また新素材の評価や導入も常に行っています。作物の栽培体系と植物生理の基礎的な知見に加え、これまでに蓄えたノウハウにより幅広い作物の使用場面に則り、求められる性能を満たす肥効調節型肥料を処方し提供することには自信をもっています。
一発肥料
省力ニーズについてインターファームでは、水稲や栽培期間の長い野菜類、柑橘類などに、地域や品種に合わせた『一発肥料』の提供に対応しています。
一発肥料とは、圃場での作物の生育が進むにつれて必要になる肥料成分が供給できるように設計された肥料で、作付前に施す「基肥」の中に異なるタイミングで肥料成分が放出される「被覆肥料」が複数配合されているため追肥を省くことが出来ます。
一発肥料の肥料設計は、作物の生育進展と気温(水温)変化を勘案して設計しますが、作物の生育や天候は年によっても異なりますので適度なフレキシビリティが必要で、作物栽培の知識と経験が必要です。インターファームは多彩な被覆肥料を扱っており、また、経験の積み重ねより信頼性に優れた一発肥料の提供や提案を行うことが出来ます。
農業用ドローン散布用肥料
有機肥料/有機配合肥料
化学肥料の登場は、イギリスの産業革命(1760年代~1830年代)後のロンドン近郊でリン鉱石に硫酸を加えて過リン酸石灰を製造する肥料工場が建設されたことが始めとされています。
その後、1906年にドイツで空気中の窒素を高温高圧条件下で水素を反応させることでアンモニアを経済的に合成するハーバーボッシュ法が発明され、1913年にはアンモニアの本格的な工業生産が開始され尿素肥料の大量生産が可能になり化学肥料全盛の時代に移っていきます。
つまり、化学肥料とは、リン鉱石や加里鉱石などの鉱物を溶けやすくするため酸処理したもの、空気中の窒素を固定化したもの、石化燃料の燃焼より発生する亜硫酸ガスをアンモニアで固定したものを指します。
第二次世界大戦終結後、以前は食糧輸出国であった発展途上国が農業から工業へと産業をシフトさせていくなか農業生産力が減退し、さらに急激な人口増加により海外からの食糧援助に依存するようになりました。国際的な情勢として、近将来に途上国を中心に食糧危機に発展する恐れがありました。
その対策として、主に1960年代に「緑の革命 (green revolution)」と呼ばれる事業が発展途上国を対象に展開されました。「緑の革命 」とは伝統的な農法に変えて、革新的な技術により食料増産を支援する事業で多大な成果を上げました。
生産性の高い品種の開発や、灌漑施設の整備、農業機械の導入、化学農薬の利用などとともに、化学肥料の普及は生産力の向上に非常に大きな役割を果たしました。戦後は化学肥料の増産とともに、肥料といえば化学肥料があたりまえの時代になっていきます。
その反面として、化学肥料一辺倒の使用や過剰投与はしだいに土壌の物理化学性や土壌微生物相を変化させ作物生育に悪影響を及ぼしたり、水系や大気の汚染の原因としてのマイナス面も認知されることになり、持続的な農業を実践する手段として有機肥料や堆肥の活用が見直されてきています。
令和4年より農林水産省は「みどりの食料システム戦略」の本格運用を開始しましたが、目標設定のひとつに「化学肥料使用の低減」があり、2030年までには化学肥料の使用量を20%削減(72万トン)、さらに2050年までには30%削減(63万トン)することが目標達成指標として掲げられています。
インターファームは、国内のバイオマス資源を原料とする一歩進んだ有機肥料やハイブリッド肥料(有機+化成肥料+肥効調節型肥料)の開発と製造に取り組んでおり、国内農業生産に貢献していきたいと考えています。
■化学肥料と有機肥料の比較